キーワードは、自動的に自分自身に束縛されるシンボルのサブタイプです。 名前つき引数(キーワード引数)や、キーワード-値のリストで広く使われて います。
Gaucheにおけるキーワード引数のサポートについては手続きを作るを、
また独自にキーワード-値リストをパーズする方法については
let-keywords マクロ(省略可能引数のパージング) も参照して下さい。
キーワードはかつてはシンボルと独立した型でしたが、それは
:で始まる識別子もシンボルとして読まれるR7RSとは非互換でした。
そこで、0.9.5からGaucheは二つのモードを持つようになりました。
キーワードとシンボルが別の型になるモードと、キーワードがシンボルのサブタイプになる
モードです。
これらのモードは環境変数によって切り替えられます。
環境変数GAUCHE_KEYWORD_DISJOINTがgosh起動時に定義されていたら、
キーワードとシンボルは別の型になります。
そうでなく、環境変数GAUCHE_KEYWORD_IS_SYMBOLが定義されていたら、
キーワードはシンボルのサブタイプになります。
どちらの環境変数も定義されていない場合のデフォルトの動作は、0.9.8で変更になりました。
0.9.7以前はGAUCHE_KEYWORD_DISJOINTの動作がデフォルトですが、
0.9.8以降はGAUCHE_KEYWORD_IS_SYMBOLがデフォルトになっています。
ほとんどの典型的なコードはどちらのモードでも動きますが、 異なる振る舞いをするコードもあります。 二つのモードの違いについてはキーワードとシンボルの統合を参照してください。
将来的に、GAUCHE_KEYWORD_DISJOINTのサポートは無くなる予定です。
今のうちに、現在のデフォルトモードでアプリケーションが走ることを
確認しておくことをお勧めします。
:name ¶名前が :name であるキーワードとして読み込まれます。
obj がキーワードであれば、#t を返します。
nameの前に:を付加した名前を持つキーワードを返します。
nameには文字列かシンボルが許されます。
(make-keyword "foo") ⇒ :foo (make-keyword 'foo) ⇒ :foo
キーワード keyword の(先頭の:を除いた)名前を文字列で返します。
(keyword->string :foo) ⇒ "foo"
キー-値のリストから値を取り出すのに便利な手続きです。 キー-値のリスト kv-list は偶数個の要素を持たなければなりません。 1つ目、3つ目、5つ目、… の要素はキーとして扱われ、 2つ目、4つ目、6つ目、… の要素は、その前の要素をキーとした値と なります。
この手続きは、キーの集合から key を探して、それが見つかれば、 対応する値を返します。 2つ以上のキーにマッチしたら、最左のものとなります。 マッチするキーがない場合、fallback が与えられていればそれを 返し、さもなければエラーを通知します。
kv-list が正しい偶数個の要素を持つリストでない場合は、エラーに なります。
キーワード-値リストの ‘キーワード’ と、key 引数は、実際には
キーワードである必要はありません。いかなる Scheme オブジェクトで
あっても良いです。キーの比較は、eq? によって行われます。
この手続きは、STk から導入されました。
(get-keyword :y '(:x 1 :y 2 :z 3)) ⇒ 2 (get-keyword 'z '(x 1 y 2 z 3)) ⇒ 3 (get-keyword :t '(:x 1 :y 2 :z 3)) ⇒ #<error> (get-keyword :t '(:x 1 :y 2 :z 3) #f) ⇒ #f
get-keyword と同様ですが、kv-list が key を
含まない場合にのみ fallback が評価されることだけが違います。
kv-list から key に eq? であるキーをもつキーと値を
削除します。
delete-keyword は kv-list を変更しません。しかし、
返されたリストは共通の末尾部分を共有します。
delete-keyword! は新しくアロケートされることはありません。
そして、破壊的に kv-list を変更する可能性があります。
最初のキーがマッチした場合元のリストは変更されないこともありえますが、
返り値のリストを使わなければいけません。
key にマッチするキーがない場合 kv-list が返ります。
(delete-keyword :y '(:x 1 :y 2 :z 3 :y 4)) ⇒ (:x 1 :z 3)
delete-keywordやdelete-keyword!と似ていますが、
keysにオブジェクトのリストを指定できます。
kv-list中のキーがkeysのうちのどれかに一致すれば、
そのキーと続く値がkv-listから取り除かれます。
(delete-keywords '(:x :y) '(:x 1 :y 2 :z 3 :y 4)) ⇒ (:z 3)
| • キーワードとシンボルの統合: |
以前のGaucheでは、キーワードはシンボルとは異なる型を持ち、自分自身に評価される
オブジェクトでした。
互換性を保つため、現在のGaucheでは:で始まるシンボルは自動的に
自分自身に束縛されるようになっています。
表面的にはこの変更はたいした違いをもたらさないでしょう。
プログラム中に表記してあるキーワードはそれ自身に評価されるので、
かつてと同じようにキーワード引数を渡すことができます。
キーワードを変数として使い、例えば(define :key 3)のように
新たな値に束縛することはできますが、その変更は
そうしているモジュールの中だけに留まります。
(他のモジュールはgauche.keywordモジュールにある:keyの束縛を
参照するので影響を受けません。)
けれども、違いが現れるいくつかのわかりづらい場合が存在し、 注意していないと古いコードの互換性を壊してしまうかもしれません。 どちらのモードでも動くようにするコードの書き方をこれから説明します。
新しいモードで問題が出て、コードを直すまで以前の動作で使いたければ、
環境変数GAUCHE_KEYWORD_DISJOINTをセットしてください。
(symbol? :key)は以前は#fを返したが、今は#tを返すキーワードに対してkeyword?は常に#tを返しますが、
シンボルかキーワードかで動作を変えるコードでは、キーワードの検査を先にするようにしてください。
;; 0.9.7以前は動作が異なる (cond [(symbol? x) (x-is-symbol)] [(keyword? x) (x-is-keyword)]) ;; どのバージョンでも動く (cond [(keyword? x) (x-is-keyword)] [(symbol? x) (x-is-symbol)])
以前のバージョンでは、util.matchやsyntax-rulesの
パターンにキーワードが現れた場合、それはキーワード自身とのみマッチしました。
現在のバージョンでは、キーワードはシンボルなので、パターン変数として扱われます。
;; 以前のバージョン (match '(a b) [(:key z) (list :key z)] [_ "nope"]) ⇒ "nope" ;; 現在のバージョン ;; :keyは単なるパターン変数となる (match '(a b) [(:key z) (list :key z)] [_ "nope"]) ⇒ (a b)
syntax-rulesでも同じことが起きます。
どのバージョンでも動くコードにするには、マッチさせたいキーワードが リテラルであることを明示してください。
matchでは、キーワードをクオートしてリテラルであることを示します。
(match '(a b) [(':key z) (list :key z)] [_ "nope"])
⇒ "nope"
syntax-rulesでは、キーワードをリテラルリストに含めてください。
(syntax-rules (:key) [(_ :key z) (list :key z)]) ;etc.
Gauche 0.9.5から、matchはパターンにクオートされていないキーワードが
現れると警告を発します。
(display :key)は以前はkey(コロン無し)を表示しましたが、
現在は:keyを表示します。
keyを表示したい場合は(display (keyword->string :key))とすれば、
どのバージョンでも同じように動作します。
キーワード(:で始まるシンボル)はgauche.keywordモジュール
の中で自分自身に束縛されます。
Gaucheコードはデフォルトでgaucheモジュールを継承し、
それがkeywordモジュールを継承しているので、
キーワードの束縛は自動的に見えるようになります。
しかしR7RSコードではgaucheモジュールは継承されないので、
:で始まるシンボルもデフォルトではただのシンボルです。
通常、Gaucheの組み込み機能を使うには(import (gauche base))としますが、
こうするとキーワードの自分自身への束縛もインポートされるようになっています
(gauche.baseがgauche.keywordも継承しているからです)。
ただ、Gaucheの手続きとは別にキーワードをR7RSコード中で使いたい場合は
注意してください。自己束縛されているキーワードだけが欲しければ
(import (gauche keyword))とする必要がありますし、
そうしない場合はキーワードに見えるシンボルでもクオートする必要があります。
(import (scheme base))
:foo ⇒ ERROR: unbound variable: :foo
(import (gauche base))
:foo ⇒ :foo
次の例では、R7RSライブラリfooが(gauche base)から
copy-portのみをインポートしています。こういった場合、
:sizeキーワードをクオートなしで使うには、(gauche keyword)も
別にインポートしなければなりません。
(あるいは、(gauche base)からインポートするシンボルのリストに
:sizeも明示するか)。
(define-library (foo)
(import (scheme base)
(only (gauche base) copy-port)
(gauche keyword))
(export cat)
(begin
(define (cat)
(copy-port (current-input-port)
(current-output-port)
:size 4096))))